社会福祉法人豊潤会|茨城県那珂市|特別養護老人ホーム|軽費老人ホーム|保育園|グループホーム|在宅介護|小規模多機能型居宅介護|認知症対応型共同生活介護|

 

チームの連携を強めるシートの作成

   

私たち介護にかかわる職員は,介護記録や連絡帳(申し送りノート)を使って職員間で連絡を取り,協力しケアを進めていきます。私の所属するグループホームでも定期的な職員会議を開催し,病院受診の時の主治医の指示を職員用の連絡帳に記入しています。また,看護師との連携は,看護師と介護職員との連絡帳を使って連絡し合っています。しかし,どうもこれだけではスタッフ間の連携ができているとは言えないと感じています。 私は,「利用者一人ひとりの既往歴と現病歴の把握はできているのだろうか」「朝昼夕と食後に薬を手渡しているが,それぞれ何粒の薬を服薬するのか」「一つひとつの薬が利用者のどの部位の,どのような症状に対して処方されているのかを分かっているのだろうか」「指示されたとおりに手渡しさえすればそれでよいのだろうか」という疑問を抱くようになりました。

 これらの疑問を看護師に尋ねてみたところ,過去に,「介護職に薬剤の使用・内服についてアドバイスしようと話し始めたら,『私は分からないので…』と,説明を聞いてもらえないことがあった」「連絡を取り合う必要があると思う症状の判断に介護職員と看護師ではズレがあるようで,『…え! 昨日のうちに分かっていたのに,どうして連絡してくれなかったの?』と思ってしまうことがよくある。そして,不満に思っていることが顔に出てしまい介護職との関係を悪くし,結果として連携が悪くなるのだと反省を繰り返している」などの声が聞かれました。

 数日後に,薬剤師にも尋ねてみたところ「在宅介護でも薬剤師がチームの一員として主治医,介護・看護スタッフと連携しなければならないと言われているが,どのようにかかわればよいのか分からないのです」と,こちらも悩んでいたのでした。

 この疑問や不満を解決するために,これまでの介護実践を振り返り,連携上の課題の抽出およびその対応策について検討してみました。

 
連携できない背景には、どのようなことがあるか
連携できない背景に,職種別にどのように取り組んできたのかを整理すると,次のようになりました。
   

【看護師】

・グループホームの医療連携契約では週に2時間(1人当たり10分程度)なので,日々の状態把握や服薬後の経過観察はできずにいた。また,病院受診した時の内容が情報として介護職から伝わってこない時は,介護職から口頭での情報収集に依存するしかなかった。

・連絡を取り合う必要があると思う症状の判断には,介護職と看護師にズレがあるようで,「…え! 昨日のうちに分かっていたのに,どうして連絡してくれなかったの?」と思ってしまうことがよくある。その時に,不満に思っていることを顔に出さずに「そうだったの。今日分かってよかったわ」と言うことができず,不満の気持ちを顔で伝えてしまい,結果として連携が悪くなるのだと反省を繰り返している。

・既往歴や現病歴などの基本になる情報を介護職も把握し,理解しておいた方がよいと思っても,職種ごとの垣根を感じて前に進めることができないでいる。

【薬剤師】

・市販薬,健康食品,ほかの医療機関からの処方薬を総合的にチェックできないので,薬を届けながら情報を得ようと努力してきた。

・利用者とは普段,会話する機会がないので,症状の把握や薬に対する副作用の早期発見ができない。

・どのようにすれば情報を得ることができるのかを模索していた。

・薬の詳しい説明をしても「分からないだろう」という思いがあるので,説明を受ける様子を見ながら慎重に説明をしていた。

・薬の副作用やアレルギーが起こっていないかが分からないので,副作用の結果を医師に報告できないまま悩んでいた。

・普段,会話する機会がないので,看護師,介護職,ヘルパー,介護支援専門員などとの連携ができないまま悩んでいた。

【介護職員】

・利用者に処方された朝,昼,夕の薬が,どんな症状の維持・改善のために処方されたのかを理解しやすいような指導を受けられずにいた。そのため,薬を服薬したことに対する詳細な経過観察の記録もなく,看護師や薬剤師,主治医に対する情報提供もあいまいになっていた。

・専門分野外の説明を口頭で受けても十分な理解を深めることが難しいのに,介護職が覚えなくても困らないように情報を見やすく整理しておく人がいなかった。

・治療効果や薬剤の副作用について継続して観察することが望ましい場合でも,経過観察のポイントを書き出し,書いた観察記録から経過が読み取れるような記録様式がなかった。

・職種ごとに利用者へのかかわる時間を見てみると,何と言っても介護職が1番長い時間,交代しながらかかわっている。したがって,介護職が看護師や薬剤師,主治医の目となり手となり耳となって連携を強めることで,症状の把握,適切な服薬,症状の維持・改善につなげることができるはずなのに,効率良く介護職の情報を看護師や薬剤師,主治医に提供する方法を見つけ出すことができずにいた。

・ほかの福祉施設の介護職の話では,「看護師は,普段水分を摂らないでいる入所者を見ると『もっと水分摂ってください』と介護職に指示するだけで,自分では飲ませようとしない。介護職は,工夫はしているが,どうすればもっと水分を摂ってくれるようになるのか分からずにいるのに…」と,「指示されるだけで,お手本を見せてくれるわけでもないので連携を強める(話す)気になれない」という意見もあった。

 
共通のツールを考案する

職種別に現在の状況での能力の発揮状況を整理すると,表1のようになりました。特に注目したいのは,介護職員が全体的に△なのに対して,①看護師は,週に2時間(1人当たり10分程度)なので,日々の状態把握や服薬後の経過観察ができないでいること,②薬剤師は,普段のかかわりがないので症状の把握や薬に対する副作用の早期発見ができないために,処方した結果を薬剤師とし

て医師に報告できないでいることが分かります。

 表1から職種別に得られる情報をどのような考え方の流れで整理すれば連携を強めることができ,そこに書かれた×を△に△を○の状態にするにはどうすればよいかを考えました。

■症状の把握をするために

 いつも利用者の身近にいる介護職が症状の把握をするためには,まず病気の症状についての知識や情報が必要になります。例えば,脳梗塞発症の危機が迫ると,顔面神経麻痺,言語障害,感覚障害などの症状が現れます。もし,介護職に脳梗塞の症状の知識があれば,①顔の歪み,②両手を上げてもらおうとしても片腕が上がらないこと,③口の動きの異変に気づくことができます。看護学校や医学部を出ていない介護職が利用者の症状を把握するためには,研修会に参加することに加えて,医師や看護師から病気と症状の観察ポイントを聞いて利用者ごとに書き出しておく必要があります。
   

■症状の伝達をするために

 一体,どのような情報を医師,薬剤師,看護師に伝えるべきなのでしょうか。

【いつ】

 症状を時間の経過と共に伝えるようにします。

【どこの部位が】

 首,腕,足,背中など症状が現れている部位を,絵と文字を使って書きます。

【どのように】

 「痛い」「腫れている」など,体に起こっている症状を具体的に書きます。

【利用者が不安・心配に思っていること】

 「自分の病気は,治らない病気かもしれない」などの不安があることを書きます。

■薬の種類の把握

 利用者は,人によって内服している薬の量が多く,また,内科以外にも眼科や精神科などからも薬をもらっています。医師は,血液検査などもしますが,薬の効用や副作用などは身近な介護職の意見を聞いて薬の調整をするので,介護職は薬の種類や副作用の把握が必要だと考えます。

 まず利用者は,①どんな既往歴や現病歴があるのか,②そして,処方医薬品は,いつから,どの部位の,どのような症状の維持・改善のために何科の医師が処方したのかを把握します。そして,③それらの情報と日々の健康チェック項目のデータを照らし合わせて処方薬の副作用やアレルギー反応による異常や変化がないかを見ます。このことにより,定期内服による副作用のないことや,各症状が薬によりコントロールされていることが分かるのです。

■薬の理解・服薬後の観察

 薬は,体にとって良い効果や作用をもたらすだけではなく,薬の使い方(用法・用量)によっては,危険な毒となる場合も多くあります。そのため,介護職は,薬が,どのような症状の維持・改善を目的に処方されたのかを理解し,薬としての効果を十分に発揮しているかを観察しなければならないと考えます。そして,重篤なアレルギー反応や副作用を起こさないように経過観察して,医師,薬剤師,看護師に情報提供していくことが利用者の生活の質を向上させることにつながると考えます。
   
ひより式チームケア連携シート

ひより式チームケア連携シート(以下,連携シート)は,異なる職種が互いに病気,症状,薬と健康チェック項目などに目を向けて情報を共有し,それぞれの情報の不足を補い合い,サービス内容につなげようとするシートです。普段は,それぞれの職種が別々に情報を集めていますが,そこで得た情報を効率良く整理することをしていませんでした。集めた情報を整理するか,整理しやすい書式に記入することによって職種別能力を発揮できるように連携シートを作成しました(図)。

■今までの職種ごとのかかわりと連携シート使用後の違い(表2)

 従来の薬に対する把握と観察,ケアに比べ,より効果的に問題のある薬の服薬を中止して重篤なアレルギーや副作用を未然に防ぐことが可能となります。さらに,薬の効果や症状の変化の原因の追及を容易にすることが可能となります。

 また,サービス内容の詳細(根拠)を利用者・家族に説明しやすくなると考えます。
 
取り組みを実践しての気づき、学び

まず,ケアチーム連携シートの叩き台をエクセルで作り,情報を記入しました。このシートに記入したことによって見えてきた全体像から,ある看護師は「定期内服による副作用のないことや,各症状が適切にコントロールされていることが読み取れる」「配列された情報を上から順に読み取っていくことで利用者本人の訴えとリンクしやすくなった」「吹き出し(テキストボックス)により,重要な情報を意識づけできるようになった」「週に2時間(1人当たり10分程度)の健康チェックでも,シートの情報を基に日々の状態把握や服薬後の経過観察に対するアドバイスがしやすくなった」と言っていました。また,別の看護師は,不満に思っていることを顔に出さずに情報を共有することができるので,とても良いと思う」と言っていました。

 薬剤師は,「介護職員の情報から,市販薬,健康食品,ほかの医療機関からの処方薬を総合的にチェックできるようになった」「利用者とは普段会話する機会がないが,症状の把握や薬に対する副作用の早期発見ができるようになった」「シートの情報を基に,薬の副作用やアレルギーが起っている可能性を医師に報告しやすくなった」「薬剤師として薬に対する情報を提供しやすくなった」「シートを介して,有用な情報の経時的なやり取りが可能となり,多職種と連携を取ることができるようになった」と言っていました。

 介護職は,「病気と症状と薬との関係が分かるようになった」「観察やサービスを安全に行うための情報が得られるので安心」「利用者・家族に対して根拠のある説明ができる」と言っていました。
 
今後の課題

この取り組みでは,別々に記録されていた利用者の情報を,エクセルで作った連携シートに整理することで,職種ごとの連携を強めることができました。しかし,今後,薬剤情報や職種別の観察ポイントなどを記入した連携シートに,毎日,レ点や数字を手書きで記入していくには,カレンダーの1マスが小さいのでマスに合わせて血圧や体温を記入することは難しいと考えます。そのため,当面は,別々に記録されている情報をこの連携シートに整理し,まとめながら,薬だけでなく「口腔内の状態と症状」と食事の摂取量や排便状態などとの関係が読み取れるようにしていきたいと思っています。

 
まとめ

私は,連携シートを眺めながら,一人の入所者の言葉を思い出しました。その人は,「この間,下剤を毎日飲んでいたら便がビジャビジャになっちゃって,ひどかったよ!」と言っていました。服薬した下剤の種類と量と日数をシートのカレンダーで確認することで,今後は正常な排便にコントロールできる気がしています。

 月の途中で職種ごとに情報を追加し確認することで,職種別の能力の発揮状況は,確実に向上できると思います。そして,他事業所の異なる職種の人の意見や助言を書き出すことで,自施設の同じ職種だけでは見ることのできない新たな視点で利用者の全体像をとらえることができたように思います。

 

引用・参考文献

1)ホームヘルパー養成研修テキスト作成委員会:訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修テキストブック 2級課程 第3巻,生活援助・相談援助・関連領域,長寿社会開発センター,2007.

2)落合亮一:ゼロからわかるバイタルサインの見かた―マンガと事例でズバリ図解!,成美堂

出版,2014.

3)茨城県・茨城県薬剤師会:くすりの豆知識,P..

qrcode.png
http://www.houjyunkai.or.jp/
モバイル版はこちら!!
バーコードリーダーで読み取り
モバイルサイトにアクセス!

<<社会福祉法人豊潤会>> 〒311-0111 茨城県那珂市後台2042-1 TEL:029-298-6399 FAX:029-298-6332